『エンディミオン』は、青年ロール・エンディミオンが、教会の軍に追われる少女アイネイアーを守り、惑星を渡って逃げるSF小説です。ダン・シモンズのハイペリオン四部作の第三作で、物語は第四作『エンディミオンの覚醒』へ続きます。

日本語版は酒井昭伸訳で、文庫版は上下巻です。ここでは小説を扱い、同名の神話やゲームのキャラクターについては解説しません。早川書房の作品紹介

読む順番と導入を先に説明し、後半では『エンディミオン』下巻までの結末のネタバレに進みます。

ハイペリオン四部作は、どの順番で読みますか?

順番 作品 関係
1 『ハイペリオン』 時間の墓標へ向かう巡礼たちの物語です
2 『ハイペリオンの没落』 巡礼と連邦の物語が進みます
3 『エンディミオン』 約300年後、新しい主人公たちの逃避行が始まります
4 『エンディミオンの覚醒』 ロールとアイネイアーの旅を締めくくります

それぞれの日本語文庫版に上下巻があるため、「第三作」と「文庫の三冊目」は同じ意味ではありません。『エンディミオン』の上巻と下巻を読み終えたら、『エンディミオンの覚醒』の上巻へ進みます。

世界の変化を順に追うなら、第一作から読むのが分かりやすいです。ただし、本作は主人公が変わり、逃げる側と追う側の目的も説明されるため、文庫版解説では独立して楽しめる作品とも紹介されています。大野万紀による文庫版解説

あらすじ:死刑を免れた青年に、少女の救出が託されます

連邦が崩壊した後の宇宙では、パクスと呼ばれる教会の勢力が人類を支配しています。惑星ハイペリオンに暮らすロールは、死刑を宣告されますが、老詩人マーティン・サイリーナスに救われます。

その代わりに託されるのが、〈時間の墓標〉に現れるアイネイアーを保護する任務です。少女は教会にとって危険な存在とされており、軍も彼女の出現を待っています。

ロールは、アンドロイドのA・ベティックとともに救出に向かいます。少女を連れ出してからも安全ではなく、一行は惑星間の旅を続けます。原著出版社によるあらすじ

登場人物の目的を整理します

人物 主な目的・立場
ロール・エンディミオン アイネイアーを守る青年で、物語を語ります
アイネイアー 追われる少女です。ロールの知らない事情や進むべき道を知っています
A・ベティック ロールと少女の旅を助けるアンドロイドです
サイリーナス ロールを救い、少女の保護を依頼する老詩人です
デ・ソヤ神父大佐 教会の命令を受け、少女を追跡します
ネメス 一行を脅かす別の追跡者で、デ・ソヤと同じ倫理で動く存在ではありません

アイネイアーを「連れ戻したい側」と「殺そうとする側」を一つにまとめると、追跡側の行動が分かりにくくなります。命令に従うデ・ソヤも、目の前で起きることが本当に正しいのかを考える人物です。追う側の目的の違いに注目した書評

パクスと聖十字架は、なぜ重要なのですか?

パクスの力は、軍隊だけに支えられているわけではありません。死者を復活させる「聖十字架」が、教会の支配と結び付いています。

死から戻れるという約束は、人々にとって大きな意味を持ちます。同時に、その仕組みを握る組織へ従わなければならないなら、身体の生死も支配の条件になります。

追跡側の高速宇宙船にも、この復活が関わります。乗組員は航行中に死に、到着後に再生されます。素早く移動できる便利な船、というだけではなく、身体に重い代償を払う仕組みです。文庫版解説の航法に関する説明

テテュス河を下ると、なぜ別の惑星へ行けますか?

テテュス河は、一つの惑星の川を下ればその星の別の町へ着く、という普通の水路ではありません。かつて惑星の水域をつなげていた転移網に関わる経路です。

一行はゲートを通り、まったく違う環境へ入ります。氷や海、森など、移動する先ごとに身体を守る方法も、出会う人々も変わります。

逃避行を追うときは、細かな地名を全部覚えるより、「少女たちはゲートで進む」「教会側は別の手段で追跡する」と分けると位置関係を整理できます。この移動方法の違いが、追い付きそうで追い付かない展開を生みます。

結末:ロールたちは、どこへ到着しますか?【ネタバレ】

本作の最後に一行が到着するのは、オールドアース、つまり地球です。 ここで逃避行の一区切りを迎えますが、パクスとの問題も、少女の使命も、すべては終わりません。

終盤ではネメスの攻撃をシュライクが阻み、デ・ソヤもアイネイアーを逃がす行動を取ります。単純に、教会の追手が最初から最後まで同じ敵として振る舞う結末ではありません。

地球に着いたアイネイアーは、建築家フランク・ロイド・ライトのサイブリッドのもとで学ぶ段階へ進みます。終盤の筋を記載した英語版作品項目

ここでの到達は、次の使命に向けた準備でもあります。「地球に着いたから四部作全体が完結した」と読むと、続く『エンディミオンの覚醒』の位置付けを取り違えます。

『エンディミオンの覚醒』は、別の主人公の話ですか?

ロールとアイネイアーの物語を引き継ぐ続編です。成長した少女とともに旅が再び進み、前作から残された問題に向き合います。原著出版社も、アイネイアーの成長とロールの同行を説明しています。『The Rise of Endymion』の公式紹介

『ハイペリオン』と『ハイペリオンの没落』が前半の組、『エンディミオン』と『エンディミオンの覚醒』が後半の組です。ただし、宇宙の歴史と登場する存在は、前後の組をまたいでつながっています。

本作を読む前の準備なら、『ハイペリオン』のあらすじと巡礼者の関係を確認すると、時間の墓標、詩人、シュライクが以前の物語でどう出てきたかを整理できます。

サイリーナスの依頼は、本作だけですべて達成されますか?

されません。少女の救出だけでなく、地球やテクノコア、教会の支配に関わる大きな依頼も託されますが、依頼された内容と、この一冊で実行できた内容は別です。

あらすじを読むときは、「老人がそう頼んだ」という説明を、「ロールがすでにやり遂げた」という出来事に置き換えないことが大切です。本作は護衛と逃避行を中心に進み、その先に残る目的が『エンディミオンの覚醒』へつながります。

参照した資料